「泣虫小僧」(横溝正史)

短篇ながらもスピーディでスリリング

「泣虫小僧」(横溝正史)
(「横溝正史ミステリ
  短篇コレクション③」)柏書房

「横溝正史ミステリ短篇コレクション③」

「泣虫小僧」(横溝正史)
(「横溝正史探偵小説
  コレクション⑤」)出版芸術社

「横溝正史探偵小説コレクション⑤」

「泣虫小僧」(横溝正史)
(「ペルシャ猫を抱く女」)角川文庫

「ペルシャ猫を抱く女」角川文庫

空腹に耐えかねた
泣虫小僧・太一は、ある晩
南瓜を盗みにいく。
その庭から見えた座敷は、
雨戸も障子も開いていた。
好奇心から忍び込んだ太一だが、
そこには女の死体が
横たわっていた。
そして奥の部屋からは
別の人間の気配が…。

戦後間もない頃に書かれた
横溝正史の短篇作品です。
短篇ながらも
スピーディでスリリングな展開であり、
謎が謎を呼ぶ筋書きとなっています。

【主要登場人物】
泣虫小僧(太一)
…戦災孤児。靴磨きをしている浮浪児。
矢吹千恵子
…殺人現場にいた少女。
 泣虫小僧を拐かす。
 県会議員を父に持つ。
お照
…屋敷の中で殺害されていた女性。
古家甚蔵
…お照の亭主。闇ブローカー。
百瀬
…所轄署刑事。

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本作品の味わいどころ①
誘拐される泣虫小僧、少女の正体は?

ミステリでは、
殺人現場に居合わせてしまった主人公が
犯人であると誤認され、
警察からも真犯人からも
追われるという筋書きが定番です。
しかし本作品の泣虫小僧は、
警察ではなく謎の少女・千恵子に
拉致・監禁されるのです。
十七、八の女学生が
刃物をちらつかせて浮浪少年を拐かす。
これも終戦直後であれば
あり得たことなのでしょう。
泣虫小僧の運命は、
そして千恵子は一体何の目的で
このようなことをしたのか?
謎が謎を呼びます。

本作品の味わいどころ②
逮捕される少女、真犯人の正体は?

千恵子は泣虫小僧が
現場から持ち去ったものを
探していたのでした。
そしてそれを探しているうちに
千恵子は刑事に逮捕されるのです。
千恵子は果たしてお照を殺したのか?
千恵子の探していたものは
どんな役割を果たしているのか?
謎が謎を呼びます。

本作品の味わいどころ③
大団円、見過ごされる「小さなこと」

警察に保護された泣虫小僧の証言から、
見事真犯人が特定されていきます。
千恵子の無実が証明されるとともに、
泣虫小僧も矢吹家に
引き取られることが示され、
めでたしめでたしで終わります。
二人の家宅侵入の罪は不問とされ、
さらには泣虫小僧の窃盗も、
千恵子の拉致監禁の罪も
見逃されます。
何ともおおらかなのですが、
それは「小さいこと」なのだと、
読み手の私たちも割り切りましょう。
その方が爽快感を味わえます。

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本作品の発表は1947年。
このとき横溝は
「本陣殺人事件」を完成させ、
「蝶々殺人事件」「獄門島」
立て続けに傑作群を
発表していた時期です。
その最中にこうした素敵な小品も
書き上げていたとは驚きです。
戦争で押さえ込まれていた
横溝の執筆意欲が、
この時期いかに旺盛であったか、
思い知らされます。
一読の価値ありです。

(2022.3.18)

〔追記〕
こちらもご覧下さい。

墓村幽の味わえ!横溝正史ミステリー

ぜひチャンネル登録をお願いいたします!

(2023.4.7)

※角川文庫版はいまだに
 絶版状態が続いています。
 2018年に柏書房から
 「横溝正史ミステリ
 短篇コレクション」が出版された以上、
 角川文庫からの復刊は
 望み薄なのでしょうか。
 旧角川文庫版は
 所有しているのですが、
 杉本一文画伯の装幀画で
 新装されたものが欲しいと願うのは
 私だけでしょうか。

※柏書房
「横溝正史ミステリ短篇コレクション
 ③刺青された男」収録作品一覧

神楽太夫

刺青された男
明治の殺人
蠟の首
かめれおん
探偵小説
花粉
アトリエの殺人
女写真師
ペルシャ猫を抱く女
消すな蠟燭
詰将棋
双生児は踊る
薔薇より薊へ
百面相芸人
泣虫小僧
建築家の死
生ける人形

Yuri_BによるPixabayからの画像
おどろおどろしい世界への入り口

【横溝正史:金田一耕助の事件簿】

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【今日のさらにお薦め3作品】

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【今日のお知らせ2022.3.18】
以下の記事をリニューアルしました。

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